ふたつの未来。
シナリオB は、構造的には可能性として存在するものの、実現するかどうかはひとえに「これから先の経営者の方々の意思決定の集積」にかかっている。
書籍『AI収益進化論』第11章は、日本のAI未来を、ふたつのシナリオに分けて描いています。シナリオA、何もしなければ自動的に進む方向。シナリオB、能動的に動き出すことで実現する未来。
このページでは、書籍の整理を私たちなりにもう一度なぞりつつ、なぜ私たちがシナリオBに寄せて事業を立てているのか、その理由を書きます。煽らないように、しかし覆い隠さないように。
ふたつの未来とは
書籍『AI収益進化論』のメインメッセージを単純化すると、こうなります。AIで売上を作り直すには、効率化AIから収益進化AIへの設計思想の転換が要る。
これを、日本中の企業がそれぞれの形で進めていったとしたら、何が起きるか。あるいは、進めなかった場合、何が起きるか。書籍はそこに、ふたつのシナリオを並べました。
シナリオA:効率化AIに留まる未来。
日本企業の多くが、効率化AIに留まったまま、収益進化AIへの設計思想の転換を踏み出せない未来。
世界の競争相手が AX for Revenue 的な動き方を加速していくなかで、日本企業は徐々に世界の景色から取り残されていく。気づいたときには、産業のメインストリームから離れた場所に、押しやられている。
社会のレベルでも、個人のレベルでも、効率化AIだけの世界は、人が「置き換えられる」感覚を抱きやすい景色を持っています。仕事は機械にどんどん代替され、空いた時間は意味を持たず、人は自分の存在意義をどこに置けばいいか分からなくなる。
シナリオAは、放っておけば自然に進む方向です。何もしなければ、効率化AIの延長で時間が過ぎていきます。
シナリオB:収益進化AIまで踏み込む未来。
経営者一人ひとり、社員一人ひとりが、自分のなかにある可能性に気づき、能動的に動き出すことで実現する未来。
日本企業のなかに眠っている厚いPI ―― 半世紀分の現場の蓄積、終身雇用・現場権限委譲・改善文化 ―― を、AIと結びつけて事業の力に変える。
AIで効率化された分の時間と集中力を、人にしかできない仕事に振り向ける。新しいものを発見する仕事、人と深い関係を築く仕事、価値そのものを定義する仕事 ―― そういう領域に、人が戻っていきます。
AIが、人の代わりに何かをやってくれる存在ではなく、人の中にある可能性を、これまでより遠くまで届ける触媒として機能する。シナリオBは、そういう景色です。
これは、現時点での私たちの見立てに過ぎません。シナリオBが必ず実現するとも、書籍も私たちも言いません。ただ、シナリオBが実現する条件は、いまの日本のなかに、たしかに存在している ―― それが、私たちの仮説です。
違いを生むのは、何か
シナリオAとシナリオBの違いを生むのは、技術ではありません。同じ ChatGPT、同じ Claude、同じ AI モデルを使っても、設計思想の側で違う方向に分かれます。
書籍は、この違いを「効率化AI と 収益進化AI」の二分法で言語化しています。出発点を「既存業務」に置くか、「現製品×現顧客の収益構造」に置くか。AIに任せるのを「人間がやっている仕事の加速」とするか、「人間にしか持ち得ない知性(PI)の注入」とするか。KPIを「工数削減」にするか、「Revenue ROI(売上ROI)」にするか。
技術ではなく、設計思想。決めるのは経営者です。
シナリオBは、放っておいても起きません。
ここは、書籍が特に強調している重要な留保です。
PIが眠っているだけでは、それは事業の力にはなりません。誰かが、現場に降りて、それを掘り起こし、AIに注ぎ込む作業をしなければ、PIは永遠に眠ったまま。能動的に掘り起こす取り組みは、自然発生的には起きません。
シナリオAは放っておけば進みます。シナリオBは放っておくと進みません。この非対称性を直視せずに「日本企業はAI時代も大丈夫」と楽観することは、書籍も私たちも、避けたい立場です。
── 書籍『AI収益進化論』第11-4章
これから先の、経営者の意思決定の集積。
書籍が第11章の結論として置いているのは、こういう整理です。
シナリオBの実現は、構造的には可能性として存在する。しかし、それが現実になるかどうかは、これから先の数年、経営者一人ひとりがどんな判断を下すか、その集積にかかっている。
私たちは、AlphaDrive として、そのひとつひとつの意思決定に伴走したいと考えています。CAXOの代行、AX Dejimaの設計と運営、書籍とホワイトペーパーによる思想の発信 ―― これらは全て、シナリオBに少しでも近づくための、私たちなりの仕事です。