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AX for Revenue実績・事例「AIは価値を生む道具ではなく、検証の速度を上げる道具」— 東レ株式会社 AI×新規事業開発研修 受講者20名の評価

「AIは価値を生む道具ではなく、検証の速度を上げる道具」— 東レ株式会社 AI×新規事業開発研修 受講者20名の評価

研修・人材開発東レ株式会社化学・素材実施 2026年7月提供 AX for Revenue 事業部門

この事例の要約

AX for Revenue は2026年7月28日、東レ株式会社の社内研修プログラムの一環として、AIを前提とした事業開発プロセスの実践型研修を実施した。参加者20名へのアンケートでは、有用度が5点満点で平均4.6、19名が4点以上をつけている。本ページは、その自由記述と研修を主催した部門の受け止めをもとに、素材が存在しない段階で何を顧客に見せるか、検証の回転数では届かない領域はどこか、素材開発そのものにAIを使うには何が前提になるかを整理した記録である。

AX for Revenue LoopAI SprintPI InjectionLoop とは →

この事例が用いた AX for Revenue の設計原理

2026年7月28日、東レ株式会社の社内研修プログラムの一環として、AIを前提とした事業開発プロセスの実践型研修を実施した。対面とオンラインの併用で、講義に加えて参加者が実際にAIを動かす演習と、顧客役に構想をぶつける模擬相談までを一日に収めている。

参加者は20名。研修終了後にアンケートを実施し、有用度を5点満点で問う設問に平均4.6の回答を得た。20名のうち13名が5点、6名が4点、1名が3点である。この数値は受講者が研修を有用と感じたかを測ったものであって、事業成果を測ったものではない。

本記事は、そのアンケートの自由記述と、研修を主催した部門の受け止めをもとに構成している。自由記述は改善要望や低い評点のものも含めて、本記事の後半にそのまま掲載した。

何を扱ったのか

研修で用いた設計原理は3つある。業務をAX Area・Human Area・DX Areaに分ける3領域モデル。AIの学習データには存在しない、人間の側にしかない知性を注入するPI(Primal Intelligence)。そして完成品を先に作って市場に放つFull-Product Launch

冒頭に置いたのは、検証のスピードが100倍になり、300回の検証を回すような世界がすでに来ているという話だった。ただしその前後で変えていないことがある。顧客が重要であり、一次情報が重要であるという原則そのものは一切動かしていない。AIによって変わるのは検証の速度と回数であって、何を検証すべきかを決めるのは人間の側にある。この順序を崩すと、AIで事業を作るという話は途端に空回りする。

受講者20名の自由記述から

AIの役割の捉え方に触れた回答が複数あった。新規事業創出をアイデア勝負ではなく顧客との仮説検証の回転数の勝負として捉える見方、そしてAIがその回転数を上げる道具であるという整理について、演習で体感したという記述がある。

素材メーカーという立場からの線引きにも言及があった。ソフトウェアやコンテンツの領域と、物理的な製造が伴う領域とで、完成品の扱い方が変わるという点である。AIで資料作成や仮説立案を高速化し、人間は顧客との対話と現場の一次情報の収集に集中するという分担への言及も含まれていた。

研修中のワークで作った手順を、同じ研修の別の場面で使ったという回答もあった。生成AIを個人や小規模組織の作業効率化の範囲で使っていたが、事業につなげる視点は持っていなかった、という記述も出ている。

回答の全文は本記事の後半に掲載している。

素材が存在しない段階で、何を顧客に見せるか

Full-Product Launch は、完成品を先に作って市場に放ち、完成品でしか得られない反応を回収する進め方である。ソフトウェアやコンテンツなら、これは文字どおり動くものを作ることを意味する。日本語で指示を書けば数十分で完成品ができる状態になったことが、この進め方を成立させた。

素材メーカーでは、そのまま適用できない。素材には物理的な製造が伴うので、完成品をその場で作ることはできない。

そこで研修で扱ったのは、まだ存在しない素材について、それがすでにあるかのような資料を先に作り、顧客にぶつけるという進め方である。素材そのものは無くてよい。それを説明できる資料があれば、顧客の課題がどこにあるかを確かめる対話は始められる。たたき台があると、たとえ想定と違っていても「そちらではなく、これではないか」という具体的な議論に入れる。

これは完成品の代わりではなく、完成品が作れない領域での検証の入口である。

この進め方には前提が一つある。完璧でないものを出すことへの心理的な壁を、先に外しておく必要がある。

すでに売るものが決まっている商材なら、価格の桁が違う、スペックが間違っているというミスは許されない。その規律が働いているほど、未完成のものを外に出すことへの抵抗は強くなる。だから最初に申し送りをする。これは構想段階のコンセプトであり、完成品の提案ではない、と伝える。期待値を揃えたうえで出せば、完璧でないもののほうが対話を早く始められる。

主催部門の受け止め

研修を主催した部門の責任者は、次のように述べている。

一通り通して聞かせていただいた印象としては、十分に伝わったのかなと思います。東レの人間からすると、体に染みついている共通部分として、現場をよく知らないと仕事にならないよね、ということを昔からよく現場主義と言うのですが、今回の考え方はその現場主義に通じるところがあります。

研修を主催した部門の責任者

実際に新規ビジネスを立ち上げるというのは、本当に泥臭いことの繰り返しであって、お客様の現場を知らないと成り立たない。そこが非常にダイレクトに伝わった気がします。

研修を主催した部門の責任者

手を動かす部分についても言及があった。

私も実際、いただいたものを元に動かしてみたら、できたのでびっくりしました。頭では分かっていても、実際に触ってみたら自分でもできる、というのは非常に良かったです。私くらいの年齢の人間でも触ってみたらできるというのは実感できましたので、若い方だったら、もっともっとこれもできないか、あれもできないかと発展させていける可能性もあるのではないかと思いました。

研修を主催した部門の責任者

検証の回転数では届かない領域

もっとも低い評点をつけた回答は、次のように書いている。

新事業創出という点では学びになった。一方で、東レという規模の大きい会社の長期利益をどう生むかという点では、やや反映しにくい点があった。ただ、他社はこういうスピード感で動いていることを忘れてはいけない。

この指摘は、本研修が扱えた範囲の輪郭と重なる。こちらの整理を述べておきたい。

新規事業には、性質の異なる2つの軸がある。

ひとつは、既存技術や既存製品の用途展開である。高付加価値な材料を生み出し、その用途を開拓して客単価と顧客数を引き上げていく。イノベーションのジレンマに抗うための王道であり、ここにはAIがほぼ全面的に効く。調査も仮説の量産も資料の作成も速くなり、コストも下がる。検証の回転数を上げれば、当たる確率は上がる。一日の研修で扱えたのは、この領域である。

もうひとつは、何十年先を見越した基礎研究から、模倣困難な技術を生み出す方向である。世の中の大きな変化を捉え、圧倒的な技術力と先行して押さえた特許によって、他社が特許切れ後も追いつけない水準を作る。企業規模に見合う利益を生むのは、多くの場合こちらである。

後者のアプローチは、前者と全く違う。未来の顧客を最初から見定め、キーとなるパートナーを早い段階で巻き込み、中長期の絵を一緒に描く。 ここで問われるのは、顧客の窓口担当者が何を困っているかではなく、その会社の経営層が次の10年に何を考えているかまで読み切ったうえで動けているか、である。読み切れていなければ、新しい技術を仕込む場所が決まらない。

これは3領域モデルでいう Human Area の仕事である。取引先の経営が向かう先を読み、そこで得た一次情報を技術の言葉に翻訳する。この活動は人間にしかできず、AIの活用とは別の設計が要る。検証の回数を100倍にしても、ここには届かない。

一日の研修で扱えるのは前者までである。後者を仕込むには、別の設計が必要になる。

素材開発そのものにAIを使うには

事業開発のプロセスとは別に、素材開発そのものへのAI適用という論点がある。マテリアルズ・インフォマティクスと呼ばれる領域である。

どの条件を組み合わせれば目的の特性が出るのか。この探索は、原理的にはAIが得意とする仕事である。実験データと世の中の知識を組み合わせて、検証レシピの設計時間を大きく縮めることは、いまの技術で可能である。算出された物性から「この特性ならこういう用途にはまるかもしれない」という提案を出し続ける仕組みも作れる。

ただし、前提が2つある。

過去の実験データが構造化されていること。 どの条件で何を試し、どういう結果になったかが、AIに読める形で蓄積されていなければ、最新のモデルを持ってきても効果は出ない。ここはAIの問題ではなくデータベース設計の問題であり、素材メーカーがAIを本格的に使うときに最初にぶつかる壁になる。

機密情報を扱える環境が設計されていること。 配合のレシピや具体的な用途は、素材メーカーにとって最も機密性の高い情報である。これを一般的なオープン環境に入力すれば漏洩のリスクがある。どういうセキュリティ環境でAIを動かすかというシステム設計は、研究開発部門にとって避けて通れない。オープンな情報とクローズドな情報を切り分けて運用している企業はすでにあり、そことの差は小さくない。

今回の研修で扱ったのは事業開発のプロセスであり、この領域には踏み込んでいない。素材メーカーにおけるAX全体を考えるなら、事業開発と素材開発の両方に設計が要る。

受講者アンケートの結果

有用度 / 東レ経営スクール 第34期 第1週「新事業創出」

4.60/ 5点満点回答者 20 名実施 2026年8月

研修の有用度について受講者が5点満点で回答したもの。受講者の受け止めを測った値であり、事業成果を測ったものではない。

有用度は、5点満点で平均4.60。回答者20名の内訳は5点が13名、4点が6名、3点が1名である(4点以上が19名)。

有用度の回答分布(回答者 20 名)5点13名 / 65%4点6名 / 30%3点1名 / 5%2点0名 / 0%1点0名 / 0%
  • 評点 5受講者

    新規事業創出はアイデア勝負というよりは、顧客との仮説検証の回転数の勝負であるとの見解は、研究・技術部署にしか属したことがなく、既存顧客とのやり取りがほとんどである自身がこれまで考えたことのない発想であり、非常に参考になった。AIは新しい価値を生む道具ではなく、仮説検証の速度を劇的に上げる道具であることについて、用途仮説量産ワークショップの実践にて体感でき、少し衝撃を受けた。

  • 評点 5受講者

    AI時代の新規事業開発について、ソフトウェアやコンテンツ領域では完成品を短時間で作って売りに行くFPLの考え方が重要になる一方、フィジカル領域ではMVPによる段階的検証が必要であるという整理は、素材メーカーにとっても非常に実践的であった。AIを活用して資料作成や仮説立案、プロトタイプ作成を高速化し、人間は顧客との対話や現場の一次情報の収集に集中すべきであるという考え方に強く共感した。

  • 評点 5受講者

    新規事業創出は未来の顧客課題を見つけ、仮説検証を圧倒的な回転数で繰り返す仕事であると理解しました。そのサイクルの中でAIと人間で取り組む業務が異なるという点は非常に参考になりました。ブレインストーミングのワークは実務でも有効活用できそうで、実際に今回の研修の中でも活用しました。短時間かつ高いクオリティの事業案や資料ができることを学べたのは大変良かったです。

  • 評点 5受講者

    お客様の課題を解決するところにビジネスがあるというのは以前から考えていましたが、全くスケールが違うというのを痛感しました。生成AIも使っている気にはなっていたものの、ビジネスへ繋げる視点はほとんどなく、個人や小規模組織の作業の効率化程度でした。もっと使い倒さないといけないという危機感を強く持ちました。

  • 評点 4受講者

    BtoB、技術起点での新事業創出という当社の立場に沿った講義とトライアルをしていただき、実際の業務でもすぐに活かせるという自信と手法をいただけたことが有難かった。取り組まれた会社の中にBtoBビジネスの会社も多数あったと思うので、よりもっとBtoBの会社、素材会社の新事業創出事例の内容やポイントを、可能な範囲で共有いただけるとよりよかった。

  • 評点 4受講者

    午後の生成AIを使ったペーパープロト作成の演習はうまくメソッド化されており、このステップの労力をまるごと最小化してくれて、実際に聞きに行ってみようという行動を促す点でとても秀逸で、受講して良かった。むしろ午前の講演は全カットし、この演習を最初に行ったうえで、そこからさらに深めたり発展形を実際にAIを使って演習していく、というフル演習パッケージの講義にしたほうが有効かもしれないと、振り返っていて考えました。

  • 評点 3受講者/最低評点

    新事業創出の点では学びになった。一方で、東レという規模の大きい会社の長期利益をどう生むかという点では、やや反映しにくい点があった。ただ、他社はこういうスピード感で動いていることを忘れてはいけない。

この事例に出てくる数値と、その出所

研修実施日

公開情報(実施記録)

2026年7月28日

参加者

公開情報(アンケート回答者数)

20

この事例で言えることと、言えないこと

Proven

  • 受講者20名の有用度評価が平均4.6、4点以上が19名であり、内容が受講者に有用と受け止められた。
  • 新規事業創出を仮説検証の回転数の勝負として捉える見方について、演習で体感したという回答が複数あった。
  • ソフトウェア領域と物理的な製造が伴う領域で完成品の扱いが変わるという線引きについて、素材メーカーの立場からの言及があった。
  • 演習で作った手順を研修中に別の場面で使ったという回答があり、その場で手が動く水準に落ちていたことが確認できる。
  • 研修を主催した部門の責任者から、研修内容についての評価を得ている。

Not Proven

  • 本事例は一日の研修であり、売上や利益への影響は検証していない。AX for Revenue の導入によって収益がどれだけ増えたかを示すものではない。
  • アンケートの有用度4.6は、受講者が研修を有用と感じたかを測った値である。事業成果を測ったものではなく、満足度と収益は別の指標として扱う必要がある。
  • 研修後に参加者の行動や業務が実際に変わったかどうかは、本記事では検証していない。
  • 最低評点をつけた回答が指摘したとおり、企業規模に見合う長期の利益をどう生むかという問いには、本研修の内容は十分に届いていない。本記事で述べた2軸の整理は、こちらの設計上の見解であり、同社での実施結果ではない。
  • 素材開発そのものへのAI適用については、前提となる条件を整理したにとどまる。本研修では扱っておらず、同社における実施状況を示すものでもない。
  • 一社の事例であり、同じ進め方が他社で同じように機能する保証はない。収益進化AIは自社固有性が高く、手順の横展開では成立しない。

よくある質問

AX for Revenue の導入事例はあるか。

ある。本ページで公開している東レ株式会社の研修が第一号で、以降も順次公開していく。ただし現時点で公開できる事例数は限られており、収益インパクトまで検証した事例はまだない。

AX for Revenue の実績は、AlphaDrive 全体の実績と何が違うのか。

AlphaDrive はこれまで260社超・23,800件超の事業プロジェクトに伴走してきたが、これは新規事業支援全体の累積であり、AX for Revenue として実施した案件の実績とは別に数えている。両者はハブページで分けて掲示している。

受講者の評価はどうだったのか。

研修後のアンケートでは、有用度を5点満点で問う設問の平均が4.6、回答者20名のうち13名が5点、6名が4点、1名が3点だった。ただしこれは受講者の受け止めを測った値であり、事業成果を測ったものではない。改善要望と最低評点の回答も本ページに掲載している。

この研修で売上は増えたのか。

本事例は一日の研修であり、売上への影響は検証していない。この事例が示しているのは、受講者が研修の内容を有用と受け止めたところまでである。収益への接続は別の指標で追う必要がある。

AIを使えば、顧客への一次情報の取得は不要になるのか。

ならない。AIが速くするのは検証の回数であって、何を検証すべきかを決めるのは人間の側にある。顧客の現場でしか得られない一次情報の価値はむしろ上がる。AX for Revenue ではこれを Primal Intelligence(PI)として整理している。

素材メーカーでも、AIで新規事業開発は進められるのか。

進められる。ただしITサービスのようにすべてを画面上で完結させることはできない。素材そのものが存在しない段階でも、それを説明できる資料を高速で作って顧客にぶつけるという進め方が現実的な起点になる。物理的な製造が伴う領域では、完成品をそのまま作ることができないためである。

同じ研修を自社でも実施できるか。

研修の型は共通だが、扱う題材は事業パートナーごとに設計している。収益進化AIは自社固有性が高く、他社向けの内容をそのまま流用しても機能しない。個別の相談は問い合わせから受け付けている。

この事例に出てくる用語

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