メインコンテンツへスキップ
Watch

自動運転トラックとは。日本の注目3社ロボトラック・T2・Turingを比較【2026年】

自動運転トラックの日本の注目スタートアップ3社、ロボトラック・T2・Turingを比較。2026年夏に各社が大型調達を発表。調達額・事業段階・技術の違いを、幹線輸送の無人化という軸で整理する。

AX for Revenue 編集部

自動運転トラックとは。日本の注目3社ロボトラック・T2・Turingを比較【2026年】

2026年の夏、日本の自動運転業界で立て続けにニュースが飛び込んできた。7月だけで、自動運転トラックやフィジカルAIを手がけるスタートアップ3社が、それぞれ大型の資金調達を発表したのだ。

先に3社の違いを一言で言えば、こうなる。 ロボトラックとT2は「幹線輸送トラックの無人化」という同じ土俵で競い合い、なかでもT2が商用運行の実績で先行する。一方Turingは、トラックに閉じず「乗用車を含む完全自動運転そのもの」を狙う、別の土俵のプレイヤーだ。同じ「自動運転スタートアップ」でも、狙う市場も技術思想も異なる。以下、その違いを調達規模と事業段階から詳しく見ていく。

7月6日、Turingがシリーズラウンド全体で累計279億円の調達完了を発表。7月21日には、T2がシリーズBのファーストクローズで50億円、累計165億円超を発表。そして7月31日、ロボトラックがシリーズAのファーストクローズで52億円の調達を明らかにした。

図1

なぜ今、自動運転トラックに資金が集まるのか(物流2024年問題)

背景にあるのは「物流の2024年問題」だ。トラックドライバーの時間外労働に上限規制がかかり、輸送力の不足が現実の経営課題になった。人手不足は今後さらに深刻化すると見られており、その解決策として幹線輸送(都市間を結ぶ長距離輸送)の自動化・無人化に期待が集まっている。

高速道路の長距離区間は、一般道に比べて走行環境が単純で、自動運転を実装しやすい。だからこそ、幹線輸送は自動運転の「最初の実用領域」として各社がしのぎを削る主戦場になっている。

ロボトラックとは。260kmを介入ゼロで走破した新鋭

3社のなかで最も新しいのがロボトラックだ。2024年4月設立と若い会社ながら、2026年7月31日のシリーズAファーストクローズで約52億円を調達した。

技術面で注目を集めたのが、実証走行の内容だ。2026年5月、神奈川県の厚木南ICから愛知県の豊田JCTまで、高速道路の約260km全区間を、セーフティドライバーが介入操作を一切行うことなく自動運転で走破した。関係省庁や投資家の視察のもとでの実証で、「人が介入せずに関東から中部まで走り切った」という事実が強いインパクトを与えた。

同社は自らの技術を、センサー情報から現実世界を理解・予測し車両の行動を生成・制御する「フィジカルAI」と位置づける。調達した資金をAI技術などに投じ、2028年の無人走行実現を目指す。出資にはJICベンチャー・グロース・インベストメンツ(リード)のほか、トヨタ自動車や三井住友銀行系のファンドなどが名を連ねた。

経済産業省・NEDOのロボット基盤モデル研究開発支援事業(GENIAC)や、豊田通商を代表とする11社のコンソーシアム、国土交通省の自動運転トラック実装支援事業にも採択されており、公的な枠組みと大手物流企業を巻き込んだ社会実装の体制を築きつつある。

T2とは。累計165億円を集め商用運行で先行する企業

T2は、3社のなかで最も事業化が進んでいるプレイヤーだ。2026年7月21日、シリーズBのファーストクローズとして11社から約50億円を調達し、累計調達額は165億円超に達した。

T2の特徴は、出資者の顔ぶれと事業の実績にある。今回のラウンドには、商船三井系のMOL PLUS、住友倉庫、栗林商船、三井不動産系ファンド、関西電力系ファンド、イオンモール系ファンド、三菱倉庫系のMLCベンチャーズなど、倉庫・不動産・リース・海運・電力と多様な業界の大手企業が名を連ねた。物流インフラを実際に握る企業群がT2を囲い込んでいる構図だ。

事業面でも先行する。T2は2024年からレベル2自動運転トラック(ドライバーが同乗し、有事にはすぐ運転を交代する段階)で50社を超えるパートナー企業の荷物を運ぶ実証を重ね、2025年夏には定期輸送の「商用運行」を開始している。神奈川県綾瀬市には、自動運転と有人運転を切り替える拠点「トランスゲート綾瀬」も設けた。

目指すのは2027年度以降のレベル4(限定条件下でシステムがすべての運転を担う段階)自動運転トラックによる幹線輸送サービスだ。今回の資金はその技術・事業開発に充てられ、2026年度中に追加クローズも予定している。

Turing(チューリング)とは。狙いは完全自動運転そのもの

3社のなかで調達規模が突出しているのがTuringだ。2026年7月6日、シリーズAのエクステンションラウンドとして126.2億円を調達し、2025年11月の152.7億円と合わせ、シリーズA全体で累計278.9億円に達した。企業評価額は約960億円とされる。

ただしTuringは、他の2社とは狙う場所が違う。同社が目指すのは幹線輸送のトラック無人化ではなく、あらゆる条件下で車が人間に代わって運転する「完全自動運転」そのものの実現だ。

技術思想も独特で、カメラから得た情報をもとに認識・判断・車両制御までを一気通貫で担うE2E(End-to-End)自動運転システムを開発している。加えて、歩行者・標識・信号・道路状況などを言語的に理解し、複雑な運転シーンに柔軟に対応する「フィジカル基盤モデル」の開発にも取り組む。AIの基盤モデルを自動運転に持ち込むアプローチだ。

今回のラウンドには、AMD Ventures、三菱商事、三菱UFJ銀行、Super Micro Computer、東京エレクトロン デバイスなど、計算基盤・半導体・データセンターを担う事業会社が引受先に加わった。AMDのGPUを開発基盤に採用し、AIの計算能力を強化する狙いがある。トラックの幹線輸送に閉じず、乗用車を含む完全自動運転という、より大きな市場を見据えている点が3社のなかで際立つ。

自動運転トラック3社の比較表(調達額・事業段階・技術)

同じ「自動運転」でも、3社の立ち位置は明確に分かれる。

ロボトラックT2Turing
設立2024年2022年2021年
主戦場幹線輸送トラック幹線輸送トラック完全自動運転全般(乗用車含む)
直近調達52億円(シリーズA 1st)50億円(シリーズB 1st)126.2億円(シリーズA ext)
累計調達165億円超278.9億円
事業段階実証(260km介入ゼロ走破)商用運行を開始済み研究開発・社会実装準備
技術の特徴フィジカルAI実装・運行インフラ先行E2E・フィジカル基盤モデル
目標時期2028年 無人走行2027年度以降 レベル4完全自動運転の社会実装

ロボトラックとT2は、幹線輸送トラックの無人化という同じ土俵で戦っている。ただしT2が「商用運行の実績」と「物流大手の連合」で先行するのに対し、ロボトラックは「260km介入ゼロ走破」という技術実証のインパクトで一気に存在感を示した。両社は近い距離で競り合う関係にある。

一方Turingは、そもそも狙う市場が違う。トラックの幹線輸送に絞らず、乗用車を含む完全自動運転そのものを、AIの基盤モデルというアプローチで解こうとしている。調達規模の大きさは、その野心の大きさの裏返しでもある。

自動運転トラックが変える物流の収益構造

この3社の動きは、単なる人手不足対策にとどまらない可能性を持つ。

自動運転による幹線輸送の無人化は、当初は「ドライバー不足を補う効率化」として語られる。しかし無人での長距離輸送が現実になれば、物流のコスト構造そのものが変わり、これまで採算が合わなかった輸送ルートや、24時間稼働を前提とした新しい物流サービスが成立しうる。効率化の話が、いつしか事業モデルの再設計の話に変わっていく。この「効率化から収益構造の再設計へ」という視点は、AIで自社の収益構造を問い直す発想そのものだ。

どの会社が主役になるのか、あるいは共存するのか。2027〜2028年にかけて、各社が掲げた目標時期が現実の答えを出しはじめる。日本の物流の風景が変わる、その入口に私たちは立っている。

参照元