90日で残すべき成果|行政AXを次の90日に接続する4歩の実装ステップ
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90日で残すべき成果とは、行政AX着手初期の90日サイクルで、次の90日に接続する形で残す成果である。着手前に推進責任と案件選定基準を決め、外注仕事の選定・工程分解・公開情報型出島での実装・財政効果と人材の接続の4歩を踏む。民間AX for Revenue Loopの90日サイクルに対応する反復設計である。
90日で残すべき成果は、行政AX着手初期の90日サイクルで達成すべき初期ゴールを明示する、AlphaDriveの独自メソッドである。行政AXは、長期のビジョンや年次計画だけでは動き出さない。「明日から何を始めるか」に接続する、具体的な区切りが必要になる。その区切りが90日サイクルであり、そのサイクルで残すべき成果を、本記事は4歩の実装ステップとして体系化する。
行政AXの全体像は行政AXで、3段階モデル(効率化AI/財政改善AI/地域価値創造AI)は「行政AX 3段階モデル」で整理している。本記事は、それらの論と構造を「今、何をするか」に接続するロードマップである。
なぜ90日を区切りとするのか
行政AXは、長期のビジョンだけでは進まない。3年計画・5年計画は必要だが、それだけでは職員は動き出さない。動き出すためには、意思決定と行動を接続する区切りが必要である。
90日を区切りとする理由は、4つある。第一に、民間の AX for Revenue Loop が90日サイクルで設計されており(麻生要一『AI収益進化論』第2章)、民間の経営実践から抽出された時間軸との整合性がある。第二に、議会の四半期サイクル(3ヶ月)と一致し、議会説明の自然なリズムに乗る。第三に、職員の業務スケジュール(3ヶ月単位の目標管理)と親和性が高い。第四に、短すぎず長すぎず、意思決定の区切りとして機能する。
ただし、90日で「完成させる」のではない。90日で「次の90日に接続できる残せる成果」を作る、が本質である。反復のリズムこそが、行政能力の変革を生む。1回のサイクルで完成を目指すと、無理が生じ、次に続かない。積み重ねを前提に設計することで、初めて能力形成に届く。
着手前 ― 推進責任と案件選定基準を決める
4歩の実装ステップに入る前に、着手前段階で決めておくべきことが3つある。ここを飛ばして一歩目に入ると、後で必ず戻り作業が発生する。着手前段階に2〜3週間を割く価値がある。
推進責任の明示
誰が90日サイクルの推進責任を持つかを、経営層(首長・副市長・CIO・CAXO)の判断で決める。現場担当や情報システム部門に「委ねる」形にしない。「AI推進担当課」を新設する必要はない。既存部門の中で責任を明示すれば十分である。責任を明示せずに始めると、四歩目の測定時に「誰が判断するのか」が曖昧になり、次のサイクルに接続できない。
案件選定基準の設定
どの案件から始めるかの判断基準を、着手前に決める。「案件選定の5つの軸」(目的の明確性・業務の切り出しやすさ・情報の分類・判断構造・責任構造)を基準にする。大規模事業ではなく、公開情報型で扱える小さな業務から始める、が原則である。
評価指標の予告
90日サイクル終了時に評価する指標を、着手前に決めておく。「財政改善AI」の3指標(実支出削減額・回避費用・能力余力)を採用する。「削減時間」を成果指標としないこと。削減時間は、行政の実支出には直結しない指標だからである。
一歩目 ― 次に外注する「作る仕事」を一つ選ぶ
90日サイクルの一歩目は、次に外注する予定の仕事を1つ選ぶことである。選定基準は4つある。大規模事業ではなく小さな事業であること。「作る仕事」(制作・作成・分析・企画などの制作物を伴う仕事)であること。機密情報・個人情報を扱わない仕事であること。90日サイクルの中で成果まで届く仕事であること。
具体的な案件イメージは、gyosei-ax-dejima-public-information-implementation-guideで扱った4案件例と接続する。住民向け広報コンテンツの作成、議会答弁のたたき台作成、政策メモの一次案作成、公開データの分析・可視化など、公開情報型で扱える業務が候補になる。
最も避けるべきパターンは、「大規模事業から始めて失敗する」ことである。大規模事業は工程が複雑で、機密情報を含み、事業者との既存契約構造も複雑である。90日で成果まで届かず、次のサイクルにも接続しない。小さな一歩から始めて、反復で拡大する、が原則である。
二歩目 ― 内製・共製・外部調達を選び直す
選んだ案件を、工程分解する。企画・設計・制作・品質判断・改善などの工程に分け、各工程について内製化仮説を立てる。工程分解の目的は、費用削減だけではない。行政に「設計権・評価権・学習資産」を戻すことである。
各工程を、5軸(品質・費用・期間・法的責任・専門性)で判定する。判定の結果は、「事業まるごと内製」でも「事業まるごと外注」でもなく、内製・共製・外部調達の混在構造になる。
重要な原則がある。事業者との既存関係を切る判断は、原則としてしない。財政改善AIは、外注をなくす運動ではない。専門性・法的責任・大規模運用・高度なセキュリティが必要な工程は、外部事業者と進めるほうが合理的である。事業者との協働の中で、工程ごとに担い方を選び直す、という枠組みで進める。
三歩目 ― 公開情報型の行政AX出島で、作って実装する
選んだ工程のうち、内製化する工程を、公開情報型行政AX出島で実装する。9限定項目(適用業務・利用者・情報・AIの権限・人の判断・期間・評価指標・停止条件・利用範囲拡張ゲート)を明示的に設定する。実装の5ステップに従い、gyosei-ax-poc-four-conditionsで整理した4条件を守る。
三歩目で守るべき最重要原則は、「作ってみる」で終わらせず「作って実装まで届く」を目標にすることである。実証で止まると、四歩目の測定ができず、次のサイクルに接続する成果も残らない。実装まで届いて初めて、財政効果と人材の能力形成が測定可能な形で残る。
なお、行政AX出島は規則の例外を作る場ではない。正当な手続を省略せず、手続が必要な部分だけを丁寧に扱うための構造である。この原則は、三歩目のすべての工程で維持する。
四歩目 ― 財政効果と人材を、次の地域案件へつなぐ
90日サイクル終了時に、2種類の測定を行う。
測定1: 財政効果
実支出削減額・回避費用・能力余力の3指標を測定する。「財政改善AI」の3指標に準拠する。削減時間ではなく、実支出と能力余力で測る。この測定は、議会・住民・監査への説明可能性を前提にする。議会説明に耐える形で数値化する。
測定2: 人材の能力形成
職員に新たに蓄積された能力を測定する。「AIを使って作る」経験の蓄積、「工程を分解して選び直す」判断力の蓄積、「事業者との協働の中で担い方を再選定する」交渉力の蓄積が対象になる。これは「行政AXアーキテクト」の初期能力形成に接続する。
測定した財政効果と人材の能力形成を、次のサイクルにつなぐ。「次の地域案件」は、3つの方向のいずれかである。同種の案件を対象範囲を広げて実施する(利用者の拡張)。別の業務カテゴリの案件を実施する(業務の拡張)。第3段「地域価値創造AI」の案件に踏み込む(段階の拡張)。「1回で終わらせない」が、四歩目の最重要原則である。
90日で残すべき成果 ― 3種類の成果
90日サイクル終了時に残すべき成果は、3種類ある。
成果1: 実装まで届いた具体的な業務改善
一つ以上の工程が、庁内で完成物まで届くようになった状態である。現行の外部調達成果物と比較して、品質・費用・期間で妥当と判断され、継続運用に接続する形で残っている。
成果2: 蓄積された学習資産
工程分解パターン、内製化判定パターン、事業者との協働パターン、9限定項目の運用パターン、PoC4条件の運用パターンが、次の案件で再利用できる形で蓄積されている。学習資産は、行政内部に留まる形で残す。外部事業者に依存する形では残さない。
成果3: 能力形成された人材
職員の中に、「AIを使って作る」経験を持つ人材が生まれ、「工程を分解して選び直す」判断ができる人材が生まれた状態である。行政AXアーキテクトの初期形が、組織内に生まれる。
3種類の成果の共通点は、いずれも「次の90日に接続できる形」であり、いずれも「1回で終わらせない」設計であり、いずれも「行政能力の変革」の一部を構成することである。
反復のリズム ― 90日を積み重ねる
90日サイクルは、1回で終わらない。2回目・3回目・4回目と反復することで、対象範囲と組織能力の両方が拡張していく。
対象範囲の拡張は、1回目に特定業務・特定利用者(3〜5名)から始まり、2回目に対象業務か利用者を広げ、3回目に準機密情報・機密情報を扱う出島に段階拡張し、4回目以降に第3段(地域価値創造AI)に踏み込む、という順序で進む。行政AXアーキテクトの能力形成も、1回目に特定職員に経験が蓄積され、2回目に周囲の職員に伝播し、3回目に組織能力として定着し始め、4回目以降に複数の行政AXアーキテクトが組織内に生まれる、という順序で進む。
反復のリズムは、行政AX3段階モデル(効率化AI/財政改善AI/地域価値創造AI)の第1段から第3段への進化と重なる。「90日で完成させる」ではなく「90日を積み重ねる」ことで、段階的な進化が可能になる。
反復のリズムは、自治体DXが積み上げてきた土台の上で機能する。データ整備・業務プロセス標準化・セキュリティ運用ルールなど、自治体DXが整えてきた基盤があるからこそ、90日サイクルで具体的な実装まで届く。
民間版 AX for Revenue Loop との構造対応
書籍『AI収益進化論』第2章が民間で示した AX for Revenue Loop との対応を、下表で明示する。
| 民間 AX for Revenue Loop の4ステップ | 行政 4歩の実装ステップ |
|---|---|
| AI Sprint(既存業務のAI化やり切り) | 一歩目・二歩目(外注する作る仕事の選定・工程分解と担い方の再選定) |
| Plateau Detection(効率化の限界を見極める) | 四歩目の測定タイミング(90日サイクル終了時の評価) |
| PI Injection(新しい金脈を探す) | 三歩目(公開情報型行政AX出島で作って実装する) |
| 収益構造の再設計(反復可能なモデル化) | 四歩目(財政効果と人材を、次の地域案件へつなぐ) |
対応する部分と異なる部分がある。対応するのは、90日サイクルという時間軸の共通性と、「1回で終わらない、反復のリズム」の設計思想である。異なるのは、民間が「探索循環(Loop)」として組まれているのに対し、行政は「蓄積形成(順序ある4歩)」として組まれている点である。また、民間のPlateau Detectionは「効率化の限界を経営判断する」段階だが、行政の四歩目は「財政効果と人材を測定して次につなぐ」段階(民間のPlateau Detectionと収益構造の再設計の両方の性質を含む)である。
民間と行政は、同じ設計思想の系譜にある。しかし、実装の詳細は、行政特有の制約(議会・監査・住民への説明可能性・法的責任の構造)を踏まえて翻訳される必要がある。単純なコピペではなく、翻訳の作業がある。
よくある質問
Q1: 90日で成果が出なかった場合、失敗と判断すべきか
失敗ではない。90日で残すべき成果は3種類(実装まで届いた業務改善・蓄積された学習資産・能力形成された人材)あり、実装まで届かなかった場合でも、学習資産と能力形成の一部は残る。それらを次のサイクルに接続することで、意味を持つ。ただし、着手前段階の設計に不足があった場合は、次のサイクル前に再設計する必要がある。
Q2: 4歩の実装ステップは、必ずこの順序で進める必要があるか
原則としてこの順序である。一歩目(案件選定)を飛ばして二歩目(工程分解)から入ると、対象案件の選定基準が曖昧になり、後で戻り作業が発生する。三歩目(公開情報型出島での実装)を飛ばして四歩目(測定)に進むことは、そもそもできない。ただし、一度サイクルを経験した組織では、2回目以降に一歩目と二歩目を並行する運用も可能になる。
Q3: 中小規模の市町村でも、90日サイクルを回せるか
回せる。むしろ中小規模の市町村のほうが、意思決定の距離が近く、90日サイクルの反復に適している。ただし、着手前段階の推進責任の明示が、より重要になる。首長級の直接的な意思決定がないと、90日サイクルは動き出さない。案件は、より小さく設定する(利用者3〜5名の範囲から始める)ことを推奨する。
Q4: 着手前段階に2〜3週間を割く時間がない場合、どうすべきか
着手前段階を短縮するのではなく、90日サイクルの開始時期を後ろにずらすほうがよい。着手前段階を飛ばして一歩目に入ると、90日サイクル終了時に「誰が判断するのか」「何を測るのか」が曖昧になり、次のサイクルに接続できない。結果として、時間の節約にならない。
Q5: 反復のリズムを維持するには、どの立場の職員が主導すべきか
反復のリズムを維持する主導者は、経営層(首長・副市長・CIO・CAXO)である。90日サイクル終了時の評価と次のサイクル設計は、経営層の判断で行う。ただし、実装の実務主導は、行政AXアーキテクトの初期形となる職員が担う。経営層と実務主導者の役割分担を、着手前段階で明示することが、反復のリズムを維持する条件になる。
行政AXの実装は、90日で完成させるものではない。90日を積み重ねることで、行政能力の変革が生まれる。自治体DXが整えてきた土台の上に、行政AXが90日サイクルで積み上がる、という関係を維持しながら、1回で終わらせない反復の設計を、着手前段階から明示する。それが、次の90日に接続する残せる成果を生む条件である。
小さな一歩から始めて、反復で拡大する。この設計思想が、AIは効率化から、収益の創造へ、という民間の潮流と、公共価値の創造へ、という行政の使命を、同じ90日サイクルの中で接続する。
発行: 株式会社アルファドライブ publisher: AXFR Institute × アルファドライブ地域経済研究所 / AlphaDrive Co., Ltd.
出典
- 株式会社Ambitions(AlphaDrive 100%子会社)「AI収益進化論──完成品製造コストゼロ時代の収益創造」(2026)https://axfr.ai/book
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