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CONTRASTPillar 2 ─ なぜAIで売上が上がらないのか

行政AX と 自治体DX|違い・積み上げ関係・使い分け

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  • 行政AX 自治体DX 違い
  • 行政AX
  • 自治体DX
  • DX から AX
  • 積み上げ関係

行政AX と 自治体DX は対立する概念ではない。自治体DX が業務改革・データ整備・共通基盤・セキュリティ・人材育成という土台を築き、その上に行政AX が AI を用いた行政能力の変革として積み上がる。順序を逆にはできない。行政AX を実装するには、自治体DX の土台が前提条件となる。

行政AX と 自治体DX は、対立関係ではなく、土台と、その上に積み上がる能力形成の関係にある。

本記事は、この積み上げの関係を独立して整理する。前提概念として、行政AXregional-ax-chiiki-ax を先に確認しておくと理解が進みやすい。

なぜ、この2つが混同されるのか

行政のデジタル関連の取り組みとして、DX と AX がひとくくりに語られる場面が増えている。「DX の次に AX が来る」「AX は新しい DX だ」「DX を AI で置き換える」といった言い回しは、その典型である。

これらの言い方は、DX と AX を「同じカテゴリの営みの新旧」として扱っている。しかし、両者は同じ営みの新旧ではない。別のカテゴリの営みである。設計思想も、対象範囲も、成果指標も異なる。書籍『AI収益進化論』第2章が民間側で「効率化AI と 収益進化AI は設計思想の側で分かれる」と整理したのと同じ構造が、行政側でも成立している(麻生要一『AI収益進化論』第2章)。

本記事の目的は、対立ではなく積み上げの構図を確立することにある。DX 従事者と AX 従事者が同じ地平で協働できる枠組みを、政策文書に耐える形で提示したい。

自治体DX とは何を積み上げてきたのか

自治体DX は、2020年12月に総務省が策定した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を起点として、10年近い蓄積を積み上げてきた営みである。

推進計画が示す重点取組事項は、情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進、行政手続のオンライン化、AI・RPA の利用推進、テレワークの推進、セキュリティ対策の徹底、地域社会のデジタル化、デジタルデバイド対策と多岐にわたる。デジタル庁のガバメントクラウドや共通機能の整備も、この延長線上で進められてきた。

これらはどれも、一朝一夕には整えられないものである。業務改革(BPR)は職員の業務理解の再構築を必要とし、データ整備は現場と情報システム部門の長期的な協働を必要とし、セキュリティ対策は絶えず更新される脅威との継続的な対峙を必要とする。

行政AX を語る文脈で、この蓄積を軽視することはできない。総務省の調査によれば、生成AI の利用状況は都道府県 87.2%、指定都市 90.0%、市区町村 29.9% に達しているが、この利用が「安全に」なされている前提には、自治体DX が築いてきたセキュリティと基盤の蓄積がある。DX なくして AI を安全に使うことはできない。

行政AX とは何を積み上げるのか

行政AX は、自治体DX の土台の上に、AI を用いて実装・学習する能力を組み込む営みである。

中心にあるのは「AI 導入の拡大」ではなく「行政能力の変革」である。書籍『行政AX ― AI時代の行政能力の変革』が提示する3段階モデル(効率化AI/財政改善AI/地域価値創造AI)は、時間・財政余力・実装能力を順に蓄積していく能力形成の過程として設計されている。3段階の詳細は 行政AX を参照。

行政AX が積み上げるのは、AI ツールの数ではない。AI を業務・組織・人材・意思決定・サービス提供のなかで使いこなし、公共価値へ反復的に変える能力そのものである。

5軸で比較する ― 自治体DX と 行政AX の違い

両者の違いを5つの軸で整理する。

自治体DX行政AX
目的業務改革・データ整備・共通基盤の構築AIを前提に行政能力を変革する
対象業務・データ・システム・セキュリティ業務・組織・人材・意思決定・サービス提供の再設計
主体情報システム部門・DX推進部門多職種チーム、経営層(首長・副市長・CIO)の判断
成果指標オンライン化率・標準化率・デジタル化率時間・財政余力・実装能力(3段階の質的成果)
期間感覚中長期の基盤整備(複数年)90日サイクルで反復・蓄積

目的軸の違いは、DX が「基盤を整えること」に焦点を置くのに対し、AX が「その基盤の上で行政能力そのものを変えること」に焦点を置く点にある。

対象軸の違いは、DX が主に業務とシステムのデジタル化を扱うのに対し、AX が組織・人材・意思決定・サービス提供までを再設計の対象とする点にある。

主体軸の違いは、DX が情報システム部門と DX 推進部門を中核とするのに対し、AX が多職種チームと経営層の判断を必要とする点にある。行政AXアーキテクトのような新しい人材類型が中心に立つ。

成果指標軸の違いは、DX が定量的な普及率で測られるのに対し、AX が能力形成の質的成果で測られる点にある。

期間感覚の違いは、DX が複数年の基盤整備を志向するのに対し、AX が90日サイクルで反復・蓄積する運用リズムを持つ点にある。

どちらが優れているという比較ではない。別の営みである、というのが本質である。

通奏低音「自治体DXは無駄じゃなかった、行政AXのインフラだった」

行政AX を語るとき、私たちは一つの通奏低音を響かせる。「自治体DXは無駄じゃなかった、行政AXのインフラだった」。

なぜ「インフラ」なのか。5つの理由で論証できる。

第一に、データが整備されていなければ、AI に学習させる素材がない。RPA 導入や標準化の過程で蓄積された構造化データは、AI 活用の前提条件そのものである。

第二に、共通基盤がなければ、AI 制御機能を安全に組み込めない。ガバメントクラウドや共通機能の整備は、AI サービスを行政の中に受け入れる際の受け皿になる。

第三に、セキュリティ対策が整っていなければ、AI サービス契約時の判断材料が不十分になる。情報分類、アクセス制御、監査ログの運用経験は、AI 制御の設計にそのまま接続する。

第四に、BPR が進んでいなければ、AI をどの工程に組み込むかの見極めができない。工程分解の前提として、業務改革の蓄積が必要になる。

第五に、人材育成の土台がなければ、行政AXアーキテクトが育たない。DX 推進担当が積み上げてきた業務理解とデジタル理解は、AX を担う人材の素地そのものである。

これら5つの前提が欠けていれば、AX はどこにも積み上がれない。DX を進めてきた自治体、DX を支えてきた事業者、DX を推進してきた国の政策 ── いずれも行政AX が可能になった理由の一部を担っている。

積み上げ関係の順序 ― 逆にはできない

DX の土台の上に AX が乗る、という順序は逆にできない。AI を先に入れて、後からデータ整備をするという進め方は、原理的に無理がある。AI に学習させる素材がなく、AI を受け入れる基盤がなく、AI を安全に使うためのセキュリティ運用がない状態では、AX は「試したが動かなかった」という結果にしかならない。

一方で、AX を進めれば DX が自動的に完成する、ということもない。AX は DX の代替ではない。両者は別の営みだからである。

ただし、DX が100%完了してから AX に着手する必要はない。ここで 行政AX で触れた並走進化の考え方が接続する。DX の第一段階が動いていれば、AX の第一段(効率化AI)に着手できる。DX の中盤で AX の第二段(財政改善AI)に踏み込める領域もある。

DX と AX を並走させるかどうか、どの領域で並走させるかは、経営層(首長・副市長・CIO・CAXO)の判断領域である。情報システム部門だけで決められる問題ではない。

DX がまだ完了していない自治体は、AX に着手できるか

実務的な問いに答える。多くの自治体は DX の途上にある。この状態で AX に着手できるだろうか。

結論としては、着手できる。ただし、DX が薄い領域では AX も薄くなる。この構造は認識しておく必要がある。

判断軸は、どの業務領域で DX が「使える水準」に達しているかを棚卸しし、その領域から AX に着手することである。「使える水準」の目安は3つある。業務の再定義が済んでいること、データがデジタル化されていること、担当職員が業務の全体像を把握していること。この3条件が揃った領域から、行政AX の第一段(効率化AI)に着手できる。

DX が薄い領域については、AX と並行して DX を整えていく設計になる。AX の実装過程で「ここに DX が足りていない」という発見が生まれ、その発見が DX の優先順位に反映される。AX と DX が相互に情報を渡し合う関係になる。

この並走設計は、繰り返しになるが、経営層の判断領域である。情報システム部門だけでも、DX 推進担当だけでも、AX 推進担当だけでも決められない。

よくある質問

Q1. DX 推進担当と行政AX 推進担当は、同じ人でよいですか。

同じ人が兼務することは可能ですが、役割の違いを明確にする必要があります。DX 推進担当は基盤整備の中長期計画を担い、行政AX 推進担当は AI を用いた行政能力形成の90日サイクル運用を担います。両者の期間感覚と成果指標が異なるため、兼務する場合は時間配分と評価軸を分けて設計してください。

Q2. DX の予算枠から AX に投資できますか、それとも別枠が必要ですか。

自治体の予算区分によりますが、両者は別の営みであるため、可能であれば別枠で管理することを推奨します。DX 予算は基盤整備の中長期投資として、AX 予算は行政能力形成の反復投資として、それぞれ成果指標を分けて管理すると、議会説明と監査対応の両面で整合性が取りやすくなります。

Q3. DX ベンダーに AX も発注できますか。

発注できる領域と、発注に向かない領域があります。判断は工程分解に基づいて行います。既存の基盤運用や標準化領域は、DX ベンダーが強みを持つ領域として引き続き発注できます。一方、行政AX のなかでも財政改善AI に相当する領域は、内製化仮説の対象になる場合が多く、外部発注と内製の組み合わせを工程ごとに選び直すことになります。DX ベンダーは行政AX の重要な協働相手であり、否定される対象ではありません。

Q4. 民間の「DX 疲れ」議論のように、行政でも「DX から AX への移行」と語ってよいですか。

推奨しません。行政における自治体DX は、業務改革・データ整備・共通基盤・セキュリティ・人材育成という不可欠な土台を築いてきた営みであり、「疲れ」や「移行」の対象ではありません。行政AX は DX の代替ではなく、DX の上に積み上がる別カテゴリの能力形成です。議会・住民・監査への説明では、この積み上げ関係を明示することが信頼構築の基盤になります。

Q5. なぜ、行政AX は自治体DX を否定してはならないのですか。

構造的な理由と、実務的な理由の両方があります。構造的には、行政AX が動作するための前提条件(データ・基盤・セキュリティ・BPR・人材)を、自治体DX が築いてきたからです。この土台を否定することは、行政AX 自身の立脚点を否定することに等しくなります。実務的には、DX 推進担当・情報システム部門・DX ベンダーとの協働なしに、行政AX は現場で動きません。彼らを「土台を築いた同志」として扱うことが、行政AX の実装可能性そのものを支えます。


行政AX は、自治体DX が築いてきた土台の上に、AI を用いた行政能力の変革を積み上げる営みである。順序を逆にはできず、代替にもならない。両者は別の営みとして並走する。

AI は、業務効率化のためだけの道具ではない。行政AX は、AI を通じて公共価値の創造へと向かう能力形成である ── AIは効率化から、価値の創造へ。この方向転換は、DX が築いた土台の上でしか成立しない。

DX を進めてきた方々の仕事は、行政AX が可能になった理由の中核にある。

より深く実装論に踏み込む場合は、行政AX の3段階モデルと regional-ax-chiiki-ax の地域展開論を続けて確認してほしい。


発行: 株式会社アルファドライブ

References

出典

  1. 総務省令和7年版 情報通信白書 第Ⅰ部 第1章 第2節「AIの爆発的な進展の動向」(2025)https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112220.html
  2. 株式会社Ambitions(AlphaDrive 100%子会社)AI収益進化論──完成品製造コストゼロ時代の収益創造(2026)https://axfr.ai/book
  3. 日本国政府/内閣府(人工知能戦略本部・人工知能戦略推進会議)人工知能基本計画 ~「信頼できるAI」による「日本再起」~(2025)https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_plan/aiplan_20251223.pdf
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